Alaska紀行 2012年9月4日(火)~9月12日(水)9日間
はじめに  

 前年(2011年)、気力も体力も使い果たしたかのように思われたロワー・ドルポ のトレッキング後、私たちは即座にこれからはもっと楽な、多少とも文明の恩恵に与れる地域を目指したいと思った。提案されたアラスカはこうして直ちに全員一致で決まった。一押しの季節は秋、デナリ国立公園が閉鎖される直前の9月1日から10日間で、そのスケジュールで旅程を組むことに決まった。あれこれコースを選択しているうちに、アラスカならオーロラと、だんだんとオーロラ観察に目的がシフトしていく。オーロラ観察ならなぜ、秋なの、という問いに、ようやくオーロラフリークたちの目が醒め、元々の自然観察のトレッキングに軌道修正がされたのだった。
秋のアラスカ 2012年9月4日(火)〜9月12日(水) 9 日間  
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9月4日(火) 9月5日(水) 9月6日(木) 9月7日(金) 9月8日(土)
9月9日(日) 9月10日(月)ー12(水          

アラスカ 雑記


ヒマラヤ山地からアラスカへ

 アラスカという地名が私の頭の中で、呼び起こすものは、40年近く前に、ヨーロッパに行く途中で寄る空港アンカレッジの殺風景な風景で、日系人の土産物屋の呼びこみ、マッキンレーの凍りついた白い山塊が印象に残る。最近ではオバマ大統領の対抗馬となり、草の根的保守政治グループ”ティーパーティー”の首謀者、ペイリンアラスカ知事の不思議な行動力、それにキングサーモン、アラスカ湾の油田、19世紀に遡ってゴールドラッシュと取り留めがない。厳寒の地の荒涼とした風景のなかで人間の金銭欲がもろに現れる土地のイメージである。わずかにイヌイットの人々とアザラシやシロクマとの生活が命の営みと自然のリズムを感じさせてくれるだけであった。    

赤の世界 黄色い世界 太古へ誘う黒々としたトウヒ

 秋のアラスカは赤の世界である。アンカレッジの街路樹であるナナカマドの実の赤さに先ず驚かされる。  

 沿道の、また山中の原野は赤一色に燃え立つようであった。地衣類もクランベリー(コケモモ)、ブルーベリー、ゴゼンタチバナ、ヤナギラン、オトギリソウ、ランコウバイ、プリムラ、フウロなどおなじみの植物も見分けがつかないほど、全てが深紅色に染まって地を覆う。ローズヒップやハイブッシュクランベリーの灌木も例外でない。  
黄色の美しい世界でもある。灌木類の多くは茶黄色となり、深紅色の絨毯上に立体的な模様を描く。  
 
 シラカバとアスペンの鮮やかな黄葉は透明な青空にどこまでも抜けていくかのようだ。そして一陣の風に一斉に葉を震わせ舞い、足下にたちまち黄色の敷物を敷く。
 
 果てしなくほとんど平坦に見える原野が茫洋と広がる。この原野がアラスカらしい風景として目を釘付けにするのは鋭角的な円錐形のトウヒである。黒々としたトウヒは幾つかのグループを作りながら燃え立つ赤色の凍土に針を刺したように屹立し、冠雪した山塊を背景に孤独感を漂わせている。何千年もの間世代交代を繰り返し、今この地に立つトウヒ。茫漠とした原野は黒々としたトウヒによって永遠の命を得ているかのようだ。自然の配置の妙は太古へと思いを誘う。  

アラスカに暮らす  

アラスカの自然に魅惑されて、移住するひとが近年増えているという。しかしこの地では自然がひとを選ぶのだという。過酷な冬に耐えられなくなり逃げ出すひとが多いそうだ。  
 昔ながらのアラスカの家は小さくつましい。ストーブを中心にベット、台所だけのワンルームで、トイレは外にある。舟津さんの森のロッジはそれに倣って建てられた。トイレには扉がない。自然の息づかいに耳を傾け、僅かなバリアで身を守りながら自然の一部としてして暮らすさまが彷彿としてくる。  (文責 千石玲子)
                                           

参加者  衛藤朝子 懸田保子 樫八重ミヨ子 工藤楚乃子 後藤はるみ
       近藤守子 千石玲子 多田以智子 前沢淑子 行本峰子
ツアーリーダー 杉美成  旅行会社 株)キャラバンサライ
現地スタッフ ドライバー:ウエスWes  加藤(Midnight Sun Express)
舟津さんの著書    舟津圭三『犬ぞり隊、南極大陸横断す』 1992年 講談社   
             『アラスカ犬ぞり物語』 1998年 七賢出版  
参考図書  星野道夫 『永遠なる生命』 小学館文庫        『風のような物語』小学館文庫