2011年7月5日(火)~7月30日(土)26日間
 ロワー・ドルポ 雑記  あとがきに代えて
生活の道,薬草の道 

 ロワー・ドルポとアパー・ドルポは気候も,植生も,風景も全く異なるらしい。 ロワー・ドルポは深い谷を擁しながらも,森と草原の緑豊かな山地である。道筋にはポツリポツリと数軒単位の集落があり,斜面を切り開きトウモロコシと麻を植えている。
 アパー・ドルポに通づる道はかっては薬草の道だった。不老長寿を願う中国の皇帝たちはドルポの地にも薬草を探させたに違いない。当時は険しい獣道だっただろう。現代は中国人の仲買人が暗躍して 冬虫夏草を村民に採取させているという。取尽され絶滅に近いらしい。
  しかしこの土地の人たちの貴重な現金収入源でもあり,フリコットの村の新築ラッシュも冬虫夏草のおかげ,チャウリコットでお世話になった民家の主人も6年間冬虫夏草を採り続け,5年前250万円で家を建てた。ただし仲買人に騙され120万円借金が残ってしまったそうだ。  

 村人の食・住生活  交通手段は歩くか,馬に限られ,人力に余る荷物はロバかラバに積む。米や塩などを運ぶロバ隊が頻繁に行き来する。
 主食は近年米の配給が始まり,米を買うこともできるようにとなった。それまではジャガイモかトウモロコシが主食だった。鶏,ヤギ,乳牛を飼い,野菜を植え自給自足の生活だが,現金収入がないので教育費や,治療費が支払えない(チャウリコットの主人談)  

 今回民家の屋根にテントを張り,愉快な経験だったが,屋根は子供の遊び場,老人の憩いの場,藁や農作物などの置き場,果てはキャベツ畑と生活の場としてフルに活用されている。犬まで上手に梯子を登る。一方室内は叩き土間で,窓がないか,あっても明かり採り程度,戸を閉めれば真っ暗で,裸電球がひとつポッと灯るだけだ。居間には中央にストーブがあり,寝室を兼ねている。個室はベットのある物置部屋である。
 
こうしてみると屋根は雨,雪,風、寒,暑を避けるための設備だけではなく,太陽の恵みを取り入れ,自然との共生を可能にする設備で,屋上は重要な生活の場,一部屋といえる。

スタッフ プロフィール  
サーダー ニマタシ:ルクラの郊外に棲み,農業を営む。一度来日するが,成田空港で身元引き受け人と連絡が取れず,そのまま強制送還される辛い経験がある。 兄と弟はNYに在住し,弟は医者をしている。  
プスパ:フランス語ができ,フランス隊につくことが多い。陽気で,身体が大きく力持ちで頼りがいがある。  
ニマヌル:ニマタシとは親戚。大学2年生(観光科)。今回は研修の一環でレポートを提出する。きちんとした英語を話す。兄が日本人女性と結婚し,千葉?に住んでいる。