ギアナ高地 カナイマ国立公園 ロライマ・トレッキングと アウヤンテプイ(エンジェルフォール)
 2014/11/24(月)~12/8(月) 

はじめに

ギアナ高地とは、私には原始的匂いがただよい容易に足を踏み入れることができない地域と思われ、そこに行ったと聞いただけで大した冒険家だと畏敬の念を抱かずにはいられなかった. 

 お誘いを受けた時は、従って尻込みし, 乗り気になれなかった. 「ともかく行ってらっしゃい、素晴らしいところだから」と前年ゴーキョをご一緒した瀬尾さんに背を押されて漸く行ってみる気なったのである. ところが送られてきた行程表にはロライマとかアウヤンテプイとかカナイマとか聞きなれない地名が記され、ギアナ高地との関係がわからない. またテーブルマウテインとかグラン・サバンナってアフリカじゃないのと混乱し、丁寧に図解された添付の地図を見ても,インターネットを開いてみても具体的なイメージがつかめない. 「ベネズエラ」も聞くところ野球が強いらしいがどうして、といった程度しか知らない有様だった. 

 気候は常夏,10月〜3月は乾期ということで装備は夏物中心、水着も持参とあるが地理的には北半球、赤道以北に位置することを知った.  

 アクセスは合衆国経由と漠然と思い込んでいたが、今回はパリ経由で、いかにも地球をぐるりと半周することが実感された. 何もかも逆の世界に飛び込むワクワク感とギアナ高地という恐れしげな地域に踏み入る期待感が漸く満ちてきたのであった。ともかくはじめての南米大陸への旅である.
                                                 →ギアナの植物
 
 日程表  日付をクリックすると紀行文にアクセスします        
 11月24日(月) 羽田空港 22:00 集合   
 11月25日(火) 羽田発  0:30 AF 293 パリ   5:30(現地時間) パリ着  AF368  パリ発10:55  カラカス15:30着
           カラカス発 国内線   20:30発  プエルトオルダス
 11月26日(水) プエルトオルダス(専用車) グランサバンナ  サンタエレナ
 11月27日(木) サンタエレナ  パライテプイ村(専用車 ) パライテプイ村 トレッキング
           リオ・クケナン 約13km /約5.5時間
 11月28日(金) リオ・クケナン(トレッキング )  ロライマBC(1870m)  約9km/約5時間
 11月29日(土) ロライマBC( トレッキング )   ロライマ頂上(2700m)  約3km/約4.5時間
 11月30日(日) ロライマ頂上 ( トレッキング )ロライマ最高ポイント<カー>(2800m)
 12月1日(月) ロライマ頂上 (トレッキング)  リオ・テック   約13k/約7時間
 12月2日(火) リオ・テック (トレッキング)  パライテプイ村 (専用車 )  サンタエレナ
 12月3日(水 サンタエレナ  セスナ機 遊覧飛行:エンジェルフォール    カナイマ
 12月4日(木) カナイマ(ボート トレッキング) アウヤンテプイ
 12月5日(金) カナイマ(セスナ機)プエルトオルダス (国内線) カラカス
 12月6日(土) カラカス (専用車) カラカス空港発17:50 AF385
 12月7日(日) パリCDG着 パリ発 AF276 成田空港着 

 
 悠久の時を歩いて   

 首都カラカスから国内線で1時間、プエルトオルダスに降り立つ. ここから草原を貫通する国道10号線、カナイマ国立公園の西側境界線を幾つかのチェックポイントを通過しながらブラジルとの国境に近いサンタエレナまで約11時間、翌日オフロードをさらに2時間、こうしてトレッキング基地のパライテプイ村にたどり着く. 

 車から降り立ち、深く息を吸い込み、周囲を見渡すと緩い起伏のある草原が地平線まで一面広がる. グランサバンナを走り抜け、その只中にいるのが漸く実感されるのであった。  

 ギアナ高地とは約110のテーブルマウテイン(テプイ)が点在する高地で、6国(ベネズエラ、ガイアナ、仏領ギアナ、コロンビア、ブラジル、スリナム)にまたがる. 46億年前に地球ができ、3億年前、地殻が分離、移動し始めるがギアナはその回転軸であったため動かず,テーブルマウテイン(テプイ)となって現存する. 

 アウヤンテプイAuyan-Tepui、カラヴァイナテプイKeravaina-Tepui, パライテプイなどの<テプイ>はペモン族の言葉で<神の家>という意味で、台地状の山や丘を指す.  

 カナイマ国立公園の東端に両翼のように聳えるクケナンとロライマは最も知られたテプイで、ロライマ山頂にはベネズエラ、ブラジル、ガイアナ三国の国境地点(トリプルポイント)がある.そしてロライマだけに一般登山者が辿れる登山道が一本のみある.1838年にドイツ人がこのルートを見つけるが滝に阻まれ断念、1884年イギリス人によって漸く登頂がはたされた.

 パライテプイ村からロライマ山頂までグランサバンナを歩くのは距離にして、片道約25kmで、ゆっくり2日の行程であった. 他所のトレッキングでもその程度は、あるいはもっと長時間歩いているかもしれない(ネパールのドルパの長かった1日を思い出す). しかしロライマを目指し、グランサバンナを歩き通す時、私たちは自分の歩いてきた道を一望のもとに見渡し、目で辿ることができる. 歩いてきた道を可視化できるのだ. それは素晴らしい体験であった.

 ポーターたちやガイドのエリオは例外なく、眺めの良い休憩地では、全員、無言でじ〜とグランサバンナを眺めている. 彼らの頭の中では何が去来しているのだろう. ギアナ高地が形成されて3〜4億年、テプイが地平に浮かぶこの広大な草原には地球の想像を絶する<時>が流れている. ここを歩くということは、その<時>に身を委ね、全身で<時> その<時空>を感じることなのだ.

 生命の持続を信じ、確かにこの宇宙のなかの一存在であるということ、生きているということが自覚できる. 全身がこの大地に身を預けて一体化している心地よさ、自然の一部になっているという快感と安らぎ。過酷な自然、過酷な生活環境かもしれない、しかし悠久の時と広大な空間のなかで、個々のはかない命は、そのはかない命を繋ぎながら永遠の命として信じることができるのではなかろうか。これはヘリコプターで飛んでは決して感得できないに違いない、と歩き続けながら思うのであった.

  ロライマ(2810m)  

 テプイのうちの最高峰であり、ペモン族の言葉では「すべての川の母、または偉大」という意味である.たった一本の登山道が岩壁に張り付くようについている。このルートを見つけた150年余前の冒険家たちに感謝する。こうして到達したロライマ山頂はまさに天空に浮かぶ<海底>、さながら潮が引き露わになった岩棚や岩礁、洞窟や巨岩、波形を刻む岩盤、水を含み固く締まった砂地、水を湛えた窪み、まるで海底を彷徨い歩いているようだ。しかしここが海底であったことはない. ひとかけらの貝がらも海洋動植物の化石もない。20億年前からの土壌が残るそうだ. 何億年も風雨に曝されて、土砂を洗い流し、削られて岩が露出し、さながら(普通には見ることが不可能な)海底を想像させる光景を作り出したのだ。見上げる天空は蒼く、薄絹を引いたような雲が様々に形を変えながら疾走していく. ひとはこの台地に立つ時、天と地と海底に同時に立っているのだ.  

 アウヤンテプイ カラオ川とクケナン川
 カナイマ国立公園の北西の端に位置するアウヤンテプイは東端のロライマ/クケナンとは対角線上にあり、広大な密林がその間を覆っている. 世界最長(979m)のエンジェル・フォールはアウヤンテプイ(魔の山)の奥深くから落下し、チュルン川(Churun)に注ぎ、カラオ(Carrao)川に合流する。この世界最長の滝に出会うにはボートでカラオ川を遡上し、ジャングルを歩く.  

 カラオ川の畔にあるロッジからは対岸にクサリテプイKusari-Tepuiなど幾つかのテプイが望め、雲がたなびき、霧が巻き、見事な半円の虹などが架かり、時の経つのを忘れる. このカラオ川は、遠くクケナンから流れ落ちたクケナン川と共に、カロニ(Caroni)川に合流し、延々とサバンナを流れてシウダーグアセナの河港でオリノコ河に注ぐ.  

 アウヤンテプイとロライマ・クケナンにそれぞれ源を持つカラオ川とクケナン川、この二本の川がカロニ川に注ぎ、カナイマ国立公園の南と東側の境界となっている. その内部はグランサバンナとして、幾つかのテプイを点在させる広大な草原と、上空から見下ろせば苔のように一部の隙もない密林とその間を蛇行する川、全く様相が異なる大地が広がっているのである.
                                  (文責:千石玲子 写真:千石玲子・懸田保子)
参加者
参加者:大瀧道子 懸田保子 鈴木静子 中村満利子 千石玲子
ツアーリーダー:杉 美成
企画:株式会社キャラバンサライ
 スタッフ
ロライマ  ガイド:エリオ    ドライバー:カルロス      ポーター:アルバン ほか 男女7名ほど      
カナイマ  ジョナサン(ウカイマ・ロッジ支配人)   ウカイマ・ロッジ同宿及びアウヤンテプイ同行者:久保 純