6月20日(土) 晴のち雨
8時22分出発。昨日の道を辿るので余裕綽々、朝露に濡れる草地を踏んで軽快に進む。ヤクマンの家の脇にシソの葉似た叢。匂いを嗅ごうと葉をむしろとして“ギャ!”。手袋をした指先に強烈な痛み。指先はみるみるうちに赤く腫れ上がる。イラクサの一種(ウルティカ・ディオイカ)だった。

 橋を渡って山道に入る。昨日惚れ惚れと愛でたアネモネが今日は生気を失っていたり、蕾が花開いていたり・・・。
8時46分丘の頂上。ジチュダケの岸壁が迫る。私達の馬も追いついて、そして追い抜いていく。ヤクマンのテントの脇を通り、ゆるやかに谷に向かって下る。背後にはジチュダケの頂きが雲を突き破って聳える。ジョモラリはもう見えない。
         
  再び丘の頂上から・・・                               ふり返ればジチュダケが・・・

谷川は幅広く、心地よい水音をたてながら流れる。この後一気に急流となってパロ・チュに流れ落ちるのだろう。左手の岩稜から崩れ落ちる瓦礫がゆるやかになったあたりの斜面には草が生えヤクが放牧されている。ヤクの子もいる。私達が近づくと慌てて母親のところに駆け寄る。生まれて間もない子はまったく警戒心がなく、無心に草のうえに座ったり寝ころんだり。あるいは対岸に渡る母親についていかれず、何度も浅瀬をさがしては戻り、岸辺に佇む子。ヤクの白骨化した頭部が転がる。

ヤクの赤ちゃん  

  浅瀬を渡るヤク

ヤクの白骨頭部
何種類かのサクラソウ、アズマギク、アネモネ、小型シャクナゲ、岩にびっしりと繁殖しているクッション植物、草むらにエーデルワイスなども見つけたりおもいおもいに写真を撮りながら歩く。.

サクラソウ(ブルー) 

アズマギク

アネモネ・トルリフォリア

トチナイソウ属アンドロサケ・セラゴ 

 エーデルワイス

ヤマハハコ属

湖が見える。このあたりから瓦礫は一気に湖に落ち、その間に道が細々とつづく。もうヤクはいない。瓦礫の間にブルーの花、見事なメコノプシスだ(4265m)(写真)。何株かある,エンゴサクも。上方を見るとそこにも・・・スタッフがカメラをもって登っていく。ツォ・フに着くまで別種のメコノプシスも。
      
メコノプシス                       エンゴサク  

12時10分 ツォ・フの畔のキャンプ地着。ヤクマンのテントが一軒。犬がこちらを見て吠える。その先にもう一つ湖があり、絶壁が壁のように取り巻き、一筋の滝が湖に落ちている。対岸の斜面はうっすらとピンク色、一面の小型シャクナゲである。

 昼食後、ペマさんが山姿でにこにこしながら湖の左手に続く道を登っていく。何処へ?明日の下見かしら。私達は瓦礫の斜面に目を凝らしてメコノプシスを探す。目とカンのいい衛藤さんがもしや、あれでは?双眼鏡で確かめる。咲き始めたばかりの素晴らしい一株。まだ殻を着けている半分ブルーの蕾、硬い蕾もいっぱいぶらさげて。少し上部にメコノプシスの群落発見。9株、色もブルー、紫とグラデーションのもの、ピンクがかったものなど、しわくちゃな咲き立てのもの、何輪も着けているものなど。湖畔で鳥見をしていた人も瓦礫の斜面に張り付くようにかがみ込んでいる私達を見て登ってくる。

 雨が降り始めてやっと腰をあげる。15時30分だ。  ひどい降りだ。湖面が鈍くひかっている。ペマさんが戻ってくる。冬虫夏草を7本。これを探しにいったのだった。相棒の馬方さんの収穫は3本だそうだ。
       
メコノプシス                                  ツォ・フ 湖 
BHUTAN2 2009