6月21日(日) 曇り
7時06分出発。(写真)昨日ペマさんが冬夏草を探しに辿った湖畔につけられた道をゆるやかに登る。二つの湖がだんだんと下方になり、谷の底に鏡面のように沈む。
 メコノプシス、プリムラ・シッキメンシス・ホペアナ(白色)、エーデルワイス、エリオフィトン・ワリキー、淡黄色のシオガマ、菫色のプリムラ、岩の割れ目に黄色い花の塊(イヌナズナ)・・・
 稜線に出たところでブルーシープの群が湖に落ち込む岩場を駆け下りていく。 

9時30分 峠(4520m), 白、ピンク、紫の小型シャクナゲに被われた台地で記念撮影。 
ペマさんが冬虫夏草を発見。興味津々で彼が堀上げるのをのぞき込む。長さ1cmくらいのモヤシのような(地上部)先に木の根っこ状のものが付いている(地中部)。これがこの植物に寄生している虫だ。 この後目を皿のようにして、地面を探すが収穫なし。峠を越え、ツォ・フはもう見えない。 

 ツォフ・をバックに記念撮影
    

ペマさんが探していた冬虫夏草


湿地盆地

ンブリ:スウェルティア・
ムルティカウリス


ツォ・フ湖

9時40分どんどん下ると前方になだらかな起伏のある大きな窪地が広がる。 底部には川がいく筋に流れ白く光っている。道端にセンブリの大きな株。 ペマさんが私達と離れて川の向こう側の丘陵に歩いていき、あっという間に見えなくなってしまう。石伝いに川を渡る。湿地でじくじくとしている平地がしばらく続き、再び登り。疲れてくる。
10:時26分菫色の美しいサクラソウの脇で休憩)。

 遠くの丘陵にペマさんが私達と並行に歩いているのがゴマ粒のように見え、そして私達と瞬く間に合流。随分と早足だ。何をしていたの?冬虫夏草を探していたらしい。

 しだいに斜面がきつくなり、草花は地を這うように背が低くなる。峠を目指してひたすら登る。何人かの男女のヤクマンたちと行き会うが微笑み返すのがやっとだ。峠に着く数歩手前で小石をひろい、ケルンに“ハッケロー”と叫んで添える。

 11時32分ボンテラ峠(4750m)。霧と風、とても寒い。ここでやっとお昼だが、配られたホットオレンジもたちまち冷たくなる。ダウンを着込んでやっと人心地つく。長居はできない。

ボンテラ峠で記念撮影

12時05分瓦礫の道をザクザク言わせながら足早に下る。30分ほど下ると次第に草地となり沢を渡る辺りから広々とした美しい草原となり(4305m)遙か下方に私達のランチ馬とサンゲを行くのが見える。後ろを振り返ると鋭く切り立った岩壁がが聳える。

 前方の山の間から冠雪した真っ白な山頂が見える。山名を聞くと6000m未満の山には名がないとか。草原はプリムラ・シッキメンスが咲き乱れ、私達は光をいっぱい浴びながらこの大自然に溶けてしまうような心地で、自分の存在を確かめるために思わず叫びだしたくなる。きっとパラダイスとはこういうところなのだ。
      
    草原を行く                          草原の背後の岩稜  

右手の山頂に人の姿が空を背景に浮かび、なにやら叫んでいる。そのうち一人が斜面を駆け下りてくる。その山の麓に石作りの小屋が見える。ヤクマンの家で、傍らには小さな菜園。ジーンズ姿の精悍な17,8才の少女が出迎えてくれる。さっき駆け下りてきた娘だ。屋内は少し煙ったく、ヤクのチーズが糸に通されて幾連もぶら下がる。すっかり燻されて茶色のものもある。

 売ってくれるかと聞くと一連が50N(約100円)だという。彼女の見送りを受けて更に草原台地を緩やかに下り、山裾を巻くと左手は一挙に急斜面となって谷に落ち込み、右手は緩やかな斜面で、頂上稜線には再び2,3人の人影が立っていて、私達のスタッフとまた大声でやりとりしている。

 チーズ小屋の少女 

 ヤクのチーズ

チーズ小屋

14時09分、標高は4155m、谷底に私達のオレンジ色のテントが米粒のようにみえる。 

さあ、ここから一挙にヤクサの谷に下るのだ。足の悪い私はペマさんの後につき、足元だけを見て慎重に道を選ぶ。道脇の急斜面にブルーシープの死骸。意外に大きい、角も見事だ。ペマさんによれば、おそらく雪豹に追われて滑落死したのだろうという。

15時19分(3815m)休憩。少し上の道端にホテイソウを見つけたというが、それを見に急な登りを戻る元気なし。ヤクマンが馬を数頭連れて登っていく。下方に農家が一軒、谷の流れも見えてくる。谷川に沿って平坦な道をしばらく歩き15時40分 ヤクサに到着。腰高な草木が生い茂る窪地で風通しが悪い。周囲の山の一角の地滑りの痕も生々しい

4150m地点よりヤクサ谷3870mを見下ろす
BHUTAN2 2009