6月22日(月)   11度

 朝食を終え、出発の準備をしていると、いつの間にか3人ほどの口を赤く染めた男女がヤクの毛で作った馬飾りの民芸品やキラを止めるコマというブローチなどアクセサリーを並べている。昨日みたチーズもある。10ニュルタム、倍の金額だ。

7時10分出発。すぐに森林のなかの登りとなる。30分ほどして振り返ると木々の間から昨日遊んだ草原台地、そこから一気に谷に落ち込む森林地帯がよく見える。ヤクサの谷は南東に広がり農家と畑が見下ろせる。道端にアツモリソウ。よくみるとあちこちに咲いている。   
   
 アツモリソウ           ヤクサ谷の農家             ボンテラ峠下の台地とヤクサ谷
白い大輪のアネモネが朝日に輝いている。高度をあげながら森林地帯を登る。アネモネ、ピンク、白、菫色のプリムラ。岩のあいだに大輪の白アネモネが幾株も幾株も段状に咲く斜面を登る。稜線近くになり、花かんざしのようなピンクのシャクナゲが目をひく。道はヤクサの谷と別れ南にむかう。山の中腹を巻くなだらかな道だ。ところどころにメコノプシス・シンプリキフォリアが咲く。ポーターのペマ君も私達が何を探しているかわかるようになり、メコノプシスをみつけると教えてくれる。             
         
    シャクナゲ                            メコノプシスの咲く斜面
 11:30 無人小屋着(4065m)。サンゲとランチ馬が待っている。外壁に薪が積まれ、入り口付近は平に石が敷き詰めてあってしっかりした作りだ。辺りはキンポウゲがいっぱい。広い河原が眼下に広がり、対岸はシャクナゲの斜面、ヤクが放牧されている。石畳に坐ってランチ。

目の前の山の斜面に目を凝らすと、あちこちにメコノプシスのブルーが見える。9株ほど見つける。サンゲはいつものように食事が終わるとすぐに馬と出発。あっという間に丘を下り河原を歩いて、対岸の山裾にとりつく。ここで2つの点は動かなくなる。双眼鏡を出してみると、どうやら馬が道草を食って言うことを聞かないらしい。サンゲがあれこれ宥め好かしている様子だ。10分ほどして漸く動きだし山陰に隠れてしまう。
この山頂にタルチョが翻っているのが目を凝らすと見える。時々雲がかかってしまう。タクルンラ峠(4430m)で、私達はこれを越えるのだ。気が遠くなりそうだが、行かなければならない!光がきらきらまばゆい大空の下でゆっくりと食後を過ごして12時12分出発。

広〜い広〜い河原を斜めに横切る。山裾の水際に大きな物体、双眼鏡で確かめるとヤクの死体だった。山を転げ落ちたのだろう。いかにもそんな風に首を折るように死んでいる。

12時39分サンゲと馬が道草を食っていたところで私達も一休み。ここから登りだ。素晴らしい天気。草も木も空気もすべてがきらきら輝いている。河原のドン詰まりにはヤクマンの家が一軒、洗濯物が翻っている。すぐ下の草地には母馬が昼寝をしている子馬をじっと見守っている。

12時55分 紫、白、ピンクの小型シャクナゲが斜面を覆い尽くす草地で20分ほど休憩。日焼け止めを塗り直す。ここから上の道は赤茶色の地肌が露出し、土砂が流れた痕か石がごろごろ、深く抉れている箇所もある(4280m)。シャクナゲなどの灌木の間にメコノプシスが林立23本(写真)。

後ろを振り返れば私達が登ってきた道筋が糸のように続いている。 ペマ君は大小のシャクナゲやメコノプシス!まで摘んで花束を作り始める。おやおや、ここは注意すべきか否か・・・                                    
         
メコノプシスの群落地                             ふり返れば・・・
 荒れた道を高度を上げる。霧が巻き先ほどとは打ってかわり灰色の世界である。14時12 分タンクルラ峠(4430m)着“ハッケロー”と叫んで小石をケルンに置く。ペマ君は例の花束を、何時の間にやら爺やもシャクナゲの花をケルンに捧げる。見れば石の間には枯れた花があちこち挟まっているではないか。そうだったのか!

頂上は狭く、霧が絶えず巻いて寒い。14時17分記念撮影をしてすぐに下る。反対側の峠直下は切り立ち、道も狭く、細かな砂礫で足場が悪い。薄紫の花が道沿いに霧に濡れて咲くが、写真を撮っている場合ではない。
ペマさんは私のすぐ前を歩き足場を確保、ペマ君も私の後につく。慎重に慎重に息を詰めるようにして、ひたすら下る。14時40 分 漸く草地に降り腰を下ろして一休み(4240m)。ジュダケ(5570m)の頂上が顔を出す。更に下り前方の小さい丘の左手を巻くようにして丘の下手にでると、眼下に広々とした草原が広がる。遠くにヤクマンの小屋、そして私達のオレンジ色のテント、馬たち。あとは皆思い思いに、周囲の山々を眺めながら緩やかな斜面をテントを目指す。15時23 分トンプ(4080m)着。                                     
            
 一息ついてトンプの草原を見下ろす                    ブラブラとテントを目指す      
 
BHUTAN2 2009