7月11日(水)雨・曇り チーズ小屋、ゴンパ 再びランタン村へ

 午前中チーズ小屋とゴンパを訪ねる。チーズ小屋の入口には吊り計りがぶら下がっている。内部は薄暗くフランスやスイスで訪ねたチーズ小屋と同様、布巾類が乾され、全て手動の簡単な装置でバター、ヨーグルト、チーズを作っている。ミルクを加熱する土製の竈がネパール風か(?)薪の煙が目に沁みる。出来たバターは紙に包まれ、木製のトランクに似た箱に保管。後日この写真を見たフランス人が故郷のやり方を思い出し懐かしがっていた。

 隣の棟はチーズ熟成庫で、三方が棚状になり、直径30cm厚さ5~6cm位のオレンジ色のチーズが天井まで並んでいる。一方は塩水漕でチーズが数個浸かっている。塩水に何回か潜らせ、乾燥させ熟成させていく硬質チーズである。主にカトマンドゥに出荷されるそうで、切り売りはしない。

 ゴンパは運悪く本堂の鍵を預かる人が3 日後の祭りの準備のためランタン村に行って留守。タルチョのはためく大きな岩のある台地まで登る。霧で周囲は真っ白で、滝は見えず音だけが響く。ヒンズーの仏塔や石を積んだ塚がある。この塚はお坊さんの墓だそうだ。

 早めの昼食を摂り、出発。霧で道とその周囲しか見えない。花もつぼんで華やかさに欠ける。それでも往路では気が付かなかった花を見つけ、霧に霞むアスターの紫が目につく。2時間後プリムラの群落する水辺に着き、たっぷりと時間をとる。そのすぐ先の道に水が流れ落ちている。ふと見上げると斜面奥に大きなイエローポピーがそそり立っているではないか。往路では気が付かなかった。足場は悪いがよじ登ると、その脇にも、上にも、あちこちにイエローポピーのおおきな株が樹木の根元に林立している。“写真家たち”がずり落ちそうになりながら撮影している間、のんびりと美しいブルーの勿忘草を帽子に飾ったりして遊ぶ。

 後ろから焚き木を背負った女性。闊達な性格と見えリンジたちと並んで大きな声ではなす。ネパール式ケルンの近くの草地に腰下ろして座ると彼女も一休み。アメやチョコレートをお裾分けすると一つは食べるが、残りはしっかりと手の中ににぎっている。子供達に残しているのだろうか。一足先に腰をあげ、瞬く間に見えなくなる。暫く行ったところの民家に彼女が居る。布にくるんだ一握りの茶色の根っこ状のものをみせる。夏草冬虫である。彼女が5000m位のところで採取したのだそうだ。

   15時ランタン村につく。前回の宿はキャンジン・ゴンパの祭りのため親戚らが泊り煩いので、今夜は村はずれの北側の岩山の下にある、白い石壁の二階建てロッジ。外観は左右対象に緑色の窓枠が四つ並んで洒落ている。しかし中に入って驚く。床は石をごろごろ敷き詰めたまま。部屋の床はさすがにベニヤを張ってあるが電気はない。トイレは岩壁側に小さい窓が一つで真っ暗。二階で食事を取るというが、階段も未完成で真っ暗。階上が家族の居住部分らしく居間はかなり大きく真ん中に薪ストーブ。テレビもあり、携帯やカメラのバッテリーの充電も出来る(17時以降。お陰で助かる)。脇に張り出して広い台所があり家族はそこから出入りしているらしい。

 家族は母親らしき年配の女性、若い女性3人(内2人は顔立ちが違うのでお嫁さんか)幼児3人、男性老若2人〜3人のようだ。“母親”によく似た女性は“眼鏡”を掛け、“ズボンにジャンパー”姿である。カトマンドゥ以外で“洋服に眼鏡”の女性を見るのは初めてである。カトマンドゥの学校に行っていて、一時帰省しているのだろうか。この“インテリ女性”の存在が想像力を刺激してやまない。

 夕食後“灯り”を消し、家族を含め全員で昨年のキャンジン・ゴンパの祭りのビデオをみる。リンジは道路状況を確かめるために、ランタン村入口の兵舎まで電話をかけにいく。



チーズ小屋の前



チーズ



チーズ小屋作業場



チーズ小屋バターの箱



塩漬けのチーズ



ランタン・コーラ脇のタルチョー(墓)



キャンジン・ゴンパの巨岩



背負い篭の女性



ランタン村崖下のロッジ


ランタン紀行