2012年9月7日(金)
9月7日(金)ヒーリー9:25 アラスカ大学フェアバンクス校(175k)  ワンワンロッジ 17:00着


ヴィグズリーの剥製の前で


パイプライン


ワンワンロッジ
   8:00。別棟のレストランで朝食を取るためロッジを出ると木道がうっすらと白く凍っている。 朝刊に昨日のデナリ国立公園に降った雪が載っている。エイルソンまでのコースはおそらく閉鎖され、私たちが最後の ツアー客だったらしい。  

 食事はアメリカ式に量が多いことを警戒して、朝食を選ぶにも一騒動である。まず卵料理だが、オムレツは卵3個、目玉焼きは2個使用で、スクランブルは確かめるまでもない。どれにする? 次に添えるもの。ベーコン?、ハム?ソーセージ?大きさは?量は? 焼き具合は? サラダの量は?誰とシェアーする?二転三転して杉さんは大忙しである。店の人は彼の傍らで忍耐強く注文決定を待っている。  

 9:25 出発。沿道のアスペンや白樺は一段と黄色が増す。10時頃から左右は沼地地帯となり、ある区間だけ樹木が立ち枯れ、そうした区間が不定期に何回も現れる。山火事によるものだそうだ。10:30 休憩。ネナナ川にかかる橋を通過。この川は凍結する。そして毎年雪が融ける日を賭ける行事がある。エントリー代20ドル、賞金400ドルだそうだ。過去に一度にワンワンロッジの宿泊人が当てたそうだ。  

 11:30 アラスカ大学に到着。高台に位置し、自動車道、原野、川、森林、山並みが地平線まで一望のもとである。一時間北方美術館を見学、イヌイットの生活、文化、動物、植物、海洋生物、鉱物、オーロラ、アラスカの開拓史などが展示されている。  

 昼食は大学のカフェテリアで。オードブル、スープ、魚や肉のメインディッシュ、温野菜、サラダ、果物、デザート、ピザやサンドウィッチの軽食、パン菓子、ケーキ類、ソフトドリンク、コーヒー、紅茶、ワインなど飲み物が各々数種類、セルフサービスで食べ放題である。学生食堂らしいといえば各自で食べ滓を捨てから、食器類を大きな洗い桶に入れることぐらいだ。それにしても食堂の広さに比して下膳場が狭いことが印象に残る。食べ残しが少ないのだろうか。  

 14:45 大学を出発。175km離れたワンワンロッジを目指す。15:10 原油のパイプラインを見学 。 北極海からアラスカ湾まで1300km続く。傍らに粘性の原油が詰まらないようにする装置の原寸大の模型が置かれている。 15:30 パイプラインを出発、15:40 スーパーマーケットに寄るが広すぎて見るだけで30分は過ぎてしまう。  

17:00 国道から小径に入り、ワンワンロッジに到着。すらっと背の高い舟津夫妻に迎えられる。抜けるような青空にアスペンの白い幹が伸び、真っ黄色の葉が小刻みにそよぐ。キラキラと光が舞う。ウエス氏とはここでお別れする。
 


オーロラ乞い


森の中のロッジ


夕陽のの牧草地
 荷物を整理し、いよいよ今夜期待のオーロラに備え、三脚やカメラの調整に喧々諤々と賑やかこの上ない。  
17:50 杉さんの案内で敷地内の森を抜け牧草地まで散歩に出る。落ち葉、苔で小径は覆われ、ムースの楕円形のコロコロした糞もある(これは冬の糞で、夏の糞は食べ物の関係で水分が多くベッタと広がっているらしい。つまりこの糞は去年の落とし物ということだ)。多くの下草は既に枯れてその下に 紅葉したゴゼンタチバナが房々と実を付けている。 クランベリーの実が真っ赤に熟れ、たちまちジャムが出来るほど摘めそうだ。口に含むと甘酸っぱい。ローズヒップの実も食べごろだ。森の入り口から数分のところに小さなロッジがあり、杉さんはここに泊まる。   

 19:55 散歩から戻ると庭には既にバーベキューの準備が整っている。まずはシャンパンで乾杯。生ハム、スモークサーモンとクリームチーズのディップ、タラバガニ、紅鮭のグリルがテーブル一杯に並べられている。巨大なキャベツに目を見張る。傍らの菜園で穫ったばかりで、堆肥で育て無農薬。一枚一枚剥がして食べる。

 まずは舟津夫妻からウエルカムドリンク、シャンパンで乾杯! 仕留めたばかりのカリブーとズッキーニの炒め合わせ、水菜の胡麻ソース和え、大根と昆布のサラダ、〆は大根の葉入りの炒めご飯。自家菜園で獲れた野菜、地元の鮭、蟹、狩猟解禁間もないカリブー、アラスカならではの御馳走で完食、大満足である。ブルベリーを使ったデザートだけは流石に入らず、明日の楽しみとなる。  

 庭に各自三脚をセッティングしてから23時ごろまで一時間ほど仮眠。後藤さんの「カメラにオーロラらしきものが写っている!」という声に飛び起き、着込めるだけ着込んで、庭に飛び出す。かなり冷え込む。濃い灰色の空に北斗星、北極星、ペガサス、白鳥座、天の川が瞬く。薄い靄が星の間にたなびいている。これがオーロラなのだそうだ。なぜなら星が透けて見えるから。雲なら星は見えないのだそうだ。カメラにはグリーンに写っているが、肉眼では灰色の靄。杉さんが暖を取るため焚き火をしてくれる。寒さに耐えかねた人が入れ替わり立ち代わりやってくる。コンパクトカメラの私はずっと背中とお尻を暖める。
 


バーベキュー

1:30頃、地平線の木立が突然、バックライトを浴び、シルエットとなって浮き上がる。天空の靄が本のページをめくるように寄せられ、おおきなうねりとなって動き始め西方面に移動しながら消え、光を浴びて黒々と浮かび上がっていた木々は再び闇に融けてしまった。あっと言う間の出来事だった。しかし薄明るくなった天空の、大きなうねりに心奪われ、時空を越えた永遠に身を置いていたような感覚に捉われた。周囲は再び闇となり、夢から覚めた。これがオーロラなのか。もう一度見たいと願ったが空に光はなく、星が瞬くだけ。2時半まで待つが諦めてロッジに戻る。カメラを据えていた面々は興奮の収まらないのか、撮影のテクニックについて更に1時間あまり話込んでいた。
9月4日(火) 9月5日(水) 9月6日(木) 9月7日(金) 9月8日(土)
9月9日(日) 9月10日(月)ー12(水