2012年9月9日(日)
9月9日(日) 晴  犬ぞりコースハイキング11:40~14:35  シェナ温泉15:45~16:45
 7:50そっと起き出して、森へ散歩に出かける。霜が下り、下草が白く凍る。朝日が当たるとキラキラ光る。足下の枯れ草の中から雷鳥が飛び立つ。鳥の鳴き声かと、耳を澄まして立っているとリスが一匹木の幹を駆け上がる。リスの鳴き声だった。  

 8:30 戻るとみんながそろそろ起き出していた。懸田さんの朝食の準備を手伝う。キャベツのスープ煮、トースト、目玉焼き、クリームチーズ、ぶどう、ブルーベリーとヨーグルトのデザート(前々日のバベキューのデザート)  

 11:40 車で出発。恭江さんも乗り込む。今日のコースは山ではなく、犬ぞりのコースで、登り下りはない。昨日のエンジェルロックの駐車場を過ぎ、国道から脇の小径に入り、突き当たりで私たちは下車。恭江さんが運転して戻る。轍のついた平な道を歩き始める。道脇にはノコギリソウの白い花の群落。やがて道はトウヒの林のなかに入って行く。歩きながら舟津さんの動植物についての説明が続く。トウヒについて。ここにあるクロトウヒ(black spruse)は丸太小屋などの建材になるが湿地(ツンドラ)に生えるシロトウヒは木材にならない。根が浅く春に凍土が緩むと傾く。これを酔っ払いトウヒというらしい。シロトウヒが生えているところに家を建ててはいけない。家も傾くのだ。当然地価は安い。アスペンは成長が早い。ウイロー(willow)はムースの好物。シラカバ(birch)のシロップ(樹液)については初耳で興味津々。4月芽が出る直前に幹に孔を開け、管を差し込む。一晩で1Lほど採れるらしい。それをストーブの上でゆっくりと煮詰める。フェアバンクスの専門店で売っているというので、全員土産にすると決める。  

 12:15 シェナ川の畔に出る。川幅の広い平面な川がゆっくりと流れて行く。対岸はトウヒ、アスペンとシラカバの森。黄葉が陽に映え美しい。川辺は砂地で、動物や大小のスニーカーの跡がある。熊が出るかもしれないというので、足跡を探すとかなり前の足跡が見つかる。狐のもある。砂まみれの死んだ鮭も転がっていた。  

 砂地に座ってお昼にする。今日のおにぎりは緑色も水々しいグリンピース(自家産)入りの白米と3分搗き米。これもまた美味しく2個とも食べてしまう。杉さんが温かいスープ、コーヒーを淹れてくれる。  


シェナ川と砂浜


犬そりの道
13:00 再び轍の残る森の径を行く。道端には深紅色に紅葉しているゴゼンタチバナ、クランベリーの群生。目線の高さにはローズヒップ、咲き遅れたピンクの野バラ(ローズヒップの花)、ハイブッシュクランベリーなど。途中轍に水が溜まり泥道になったので、薮の中を迂回する。足下は深い苔でふかふかしてバランスを崩すほど。木に掴まり、よろけながら進む。まるで深い新雪の中を歩いているようだ。  

 再び轍跡のある径に出る。陽を一杯に浴びワタスゲの白い毛が揺れる。花期はもう終わっているがアイリスの咲く小径でもあるようだ。今はクランベリーの季節、はち切れんばかりの深紅の実をたわわにつけている。歓声をあげながら道すがら摘んでは口に含む。

 13:45ごろ、近道をするため薮に入る。そこは数年前に土地の購入者が森を拓き更地にしたがそのまま放置したため草木が生い茂ってしまった。背丈ほどある草をかき分け、ローズヒップなどの有刺植物や枯れ枝にひっかり、隠れた石や凹みにつまずいたりして台地に出る。抜けるような青空を背景に黄葉したアスペンの葉が風に細かく細かく揺れ、サラサラと乾いた音を奏でている。無数の小さな鈴が鳴っているようにも聞こえる。インディアンはこの音を「女性のおしゃべり」というのだそうだ。  

 再び小径に出る。径を隔てた向かいがわは舟津さんと隣家の敷地であった。ちなみに 舟津宅は200mx400m=80、000m2(24、000坪) お隣はさらに広くアラスカ大学の研究者、夫人は小学校の先生だそうだ。 もうハイキングは終わった気分でいると、船津さんの森は意外に深く、途中狐の巣の傍らを抜けたり、舟津さんの知人の女性2人がクランベリー摘みをしているのに出会ったりしてなかなかワンワンロッジに着かない。  

 14:35 ロッジ着。すぐに温泉に行くため水着、タオル、洗面用具を持って15時 再び車に乗り込み、アスペン、シラカバ、トウヒの森を切り開いた国道をシェナ温泉に向かう。途中エンジェルロックの岩がよく見える。道路上に鳥が死んでいる。車を止めて確かめるとエリマキライチョウで、大型の鳥に襲われたのだろうという。  

 15:45 チェナ温泉着。スポーツ施設付きリゾートの雰囲気である。入場券(シニア割引で8ドル)を買い、脱いだ靴を持って水浸しのロッカー室(25セント)へ。水着に着替えてシャワー。要はプールに入る手順なのだが事情が判らずまごまごする。長い廊下、室内温泉プール、ジャグジー室を通って屋外の温泉、というより大きな変形プールに出る。周囲は岩で囲ってあり、中央付近に巨大な噴水がある。底は砂地のようだ。深さは1m位あり、水温は37℃くらいか。紅葉した山々が真近に迫る。大柄な男女が岩に座ったり、湯の中に立って笑ったり話したりしている。幸せそうだ。私たちはゆっくりと一周して出る。水浸しのロッカー室、使い方の判らぬドライヤーなどで着替えも一苦労である。約束の16時45分に辛うじて間にあう。5分猶予をもらい急いで売店をのぞく。帰路、道路脇につがいのライチョウを見かけ、何度も徐行して探すが写真は撮れなかった。  


クランベリー



 クランベリー摘み取り
 17:45 ロッジ着。荷物を置いてすぐに予約してある韓国料理店へ。車で5分ほど、国道脇の空き地に建つ、一見プレハブ造りの住宅。内部もガランとして、テーブルが雑然と並んでいる。一組の老夫婦の先客。私たちのテーブル上には所狭しと食器類がセットしてある。席に着くや、骨付き肉とジャガイモ一個と丸ごと人参の豪快な煮込みがこれまた大きな丼で各自に運ばれてくる。これ一皿でお腹はいっぱいだ。それから次から次へと焼き肉、各種ナムル、野菜炒め、スープなどが大量に出てくる。食後のアイスクリームの量もすごい。半分以上を舟津夫妻に持ち帰って頂く。それ用のプラスチックの容器が店の隅に用意してあった。店は繁盛しているが、気候条件が厳しいので、経営者夫妻はそろそろ町の方に引越ししたいらしい。19:25 帰宅。  

 20:50 船津さんの犬ぞりによる南極大陸横断のスライドを見ながら話を聞く。1989年7月から1990年3月、220日間。6カ国(イギリス、フランス、合衆国、中国、インド、日本)から各一人選抜された6人で、エスキモー犬36匹を3台のそりに引かせた。船津さんは36歳、犬ぞり担当で参加された。仲間との日常生活や犬の性格や死、遭難、その後のアラスカでの生活など淡々と語られた。  

 23:30 最後のオーロラ観察。今夜は晴天で絶好のオーロラ日和と舟津さんに太鼓判を押され、期待感が増す。寒さも一段と強まり、杉さんが焚き火をしてくれても温まらない。空を見上げても北斗星のあたりに薄い靄がたなびくばかり。首が痛くなってしまう。1時まで頑張るが一足先に室内に戻り寝る。
9月4日(火) 9月5日(水) 9月6日(木) 9月7日(金) 9月8日(土)
9月9日(日) 9月10日(月)ー12(水